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蜘蛛の糸とロープのこと


  

 ロッククライミングではロープで確保しながら登攀するのであるが、この時ロープをどのように使用すればより安全なのか?

9mmロープのシングル、9mmロープをダブルにする、9mmロープをツインにする、12mmロープをシングルにする。

 このことを考えるに当たり、ロープに命を懸けている蜘蛛(くも)の糸をクライミングロープに見たてて考えて見るのも興味を引かれる。

 蜘蛛の糸は二種類ある。一つは獲物を捕らえる網を編み上げる糸であり、もう一つは蜘蛛自身が落下しても安全の為に用いる牽引糸である。

この牽引糸は我々クライマーのクライミングロープに当たる。蜘蛛の牽引糸は二本の細いフィラメントから構成されている。そして一本で蜘蛛が巣から何かのはずみで落下しても支えることが可能な強度を持っている。

 この糸の強度であるが、糸が太ければ安全性は増すが、それを生み出す無駄なエネルギーを必要とする。また糸が細ければエネルギーは少ないが、危険性が増す。最大の効率とゆとりを持つ安全性が重要なのである。

 一本が切れても残りの一本で体重を支えることが可能となり、安全を守る為に二倍の強度を持つことを蜘蛛はその永い進化の過程で獲得した知恵である。

 安全率―2倍−の重要な意味は蜘蛛に限らず我々も経験していることが身近にいくつもある。写真を撮るとき「念のためにもう一枚シャッターを押す」、「武士の大将は影武者をたてる」、海底トンネル(複線一本より単線二本)、人間の臓器(腎臓など左右二個)、受験(押えに、もう一校)などなどである。

 そう見てくると、ロープはやはりダブルロープが最善だと私は思う。ロープ一本では心もとないし三本では効率が悪い。

 蜘蛛はかしこい!!!

                          2001・5・25


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